企業の技術や文化を守りながら、新たなチャレンジの手助けをする。(由紀精密/由紀ホールディングス 大坪 正人さん) – MITSUBOSHI 1887
 

企業の技術や文化を守りながら、新たなチャレンジの手助けをする。(由紀精密/由紀ホールディングス 大坪 正人さん)

  • by SHOPSTAFF

MITSUBOSHI1887を愛用してくださっている「使い手」の声と出会うMeets VOICE(ミツボイス)。

今回は、由紀精密/由紀ホールディングス代表取締役社長の大坪 正人さんに、代表の岩田真吾(真)がお話を伺いました。

 

 

家業のピンチを知り、戻って経営の立て直しに奔走。

(真)
本日はよろしくお願いいたします。

大坪さんは由紀精密の3代目でいらっしゃいますが、由紀精密という会社についてや、会社を継ぐに至った経緯をお聞かせいただけますか?

 

(大坪)
由紀精密は、もともとねじ屋さんから始まった会社です。
一言にねじと言っても、作り方は大きく分けて2種類あって。金型にある筋をねじに転写して作る「転造ねじ」と、金属の棒を削って作る「切削ねじ」があります。一般的に大量生産されているのは転造ねじですが、由紀精密が作っていたのは切削ねじで、特殊なねじや少量多品種のねじの製造を行ってきました。

父親の車好きが影響して、私も小さい頃から車や機械が大好きだったんですね。祖父の工場も家のすぐ隣にあったので、小さい頃からよく遊びに行っていました。

そして大学も、実家の会社を継ぐためではなく、単純に機械が好きだからという理由で機械科に進みました。

 

(真)
家業の業種は関係なく、純粋に機械が好きだったから機械の道を選ばれたんですね。

 

(大坪)
はい。大学卒業後も、まったく別の会社に入社しました。ITと製造の中間のような、製造をデジタル化するような会社で、ITものづくりのようなことをやっていました。

でも、そこで親の会社がピンチになり、戻ることを決めて。経営を立て直すためにはねじの製造だけでは厳しかったので、航空宇宙や医療機器などの新たな分野を開拓していきました。また、機械科で機械設計を学んでいたので、その知識を使って開発部門の立ち上げも行いました。

(真)
会社が培ってきた技術力とご自身の経験を活かして、大きく改革されていったと。

ちなみに、お客さんから受注して作る商品と、自社オリジナルで作る商品だとどちらが多いのでしょうか?

 

(大坪)
今は半々くらいですね。実は、自社商品っていうのはまだ結構少なくて。開発部門を作ったのも、お客様が「こんなものを開発してほしい」というものを受けて開発する受託開発が目的でした。

でも、コロナの影響でこういった受託開発は止まってしまう現状もあり、今後は自社商品の開発にもより注力していこうと考えています。

 

(真)
時代の変化や状況に合わせた転換力や柔軟性こそが、事業発展において大切なんですね。

 

 

「製造業全体を改善していきたい」という思いから、
ホールディングスの立ち上げを決意。

(真)
2017年には持ち株会社の由紀ホールディングスを設立されましたが、そこにはどのような背景があったのでしょうか?

 

(大坪)
由紀精密を危機的な状況から改善し、業績も安定し軌道に乗ってきたと言えるようになって。次はどう発展させていこうかと考えていた時、当時40人にいかない程だった社員数を10倍、20倍にしたりするのは、職種的に違うなと思ったんです。

企業って、適正な規模があると思うんですね。特に、量産向けでない特殊なものを受託開発する会社の社員数を200人、300人にしても、逆にすごく効率が悪くなってしまうんじゃないかと思って。それで、由紀精密は由紀精密で規模感は変えずにやっていこうと考えました。

じゃあ、次は何をしようかと。

 

(真)
そこが、自社以外の企業に目を向けるタイミングだったんですね。

 

(大坪)
はい。そもそも自分が由紀精密に戻った時、親の会社を継ごうという思いより「製造業全体を改善していかなければ」という思いがあったんです。自分が生きている間にできることってあとどのぐらいあるんだろうと考えたとき、もうちょっと影響範囲を広くしていきたいと思ったんですね。

だったら、技術力はあるんだけど経営でちょっと苦戦していたり、開発力がなかったり、そういう会社を自分の時と同じような手法で立て直していけたらいいな、と。
それで、技術的に魅力のある会社とグループを作っていこうと決めました。

 

(真)
経営や製造における課題に対してコンサルティングするのではなく、事業そのものを引き継いで立て直していくという方法をとられたと。

 

(大坪)
そうですね。一過性で「由紀精密でやっていた方法を教えますよ」って言っても、あまり良くならない気がしたんですよ。もちろん良くはなりますが、会社全体を本当に改革できているかと言うと、なかなか継続性の問題もあって難しい。

それよりも、もっと自分事で取り組まなければいけないと思って。一体感をもって喜びを共有しあえるような、もっと継続的に長い目で良くしていける関係になるべきなんじゃないかと感じたんです。

 

 

グループ企業のカラ―や文化を守りながら、
その力を伸ばす手助けをする。

(大坪)
ただ一方で、高い技術力やブランドもある会社に、「グループ化したから『由紀~』に名前を変えてくださいね」「株持ったから役員全部変えますね」「社風はこうしてくださいね」っていうのも、何か違うなと。

グループ合計で500年以上の歴史を背負っているので、それぞれのカラーや企業文化はしっかり守っていかなければと思っています。

でも、会社は変化も起こしていかないと現状維持ではどんどん衰退していってしまうので、新しくするところは一緒に手伝っていこうと。

 

(真)
その会社の独自性や文化はしっかりと維持しつつ、新しい価値を作り上げる手助けをするんですね。

企業をグループ化するケースとしては、具体的にどんなものがあるんでしょうか?

 

(大坪)
一番最初は、何社かが集まったとあるグループ会社からの事業承継案件でした。そこはオーナーが自分で他社の株を買って集められてきたグループで、自分が創業社長でずっとやってきたっていうよりは、「自分ができる間はちゃんとやって、次は誰かに渡そう」という感じでしたね。

あとは、単純に社長が80代でもう引退したいけどアトツギがいない会社だったり、突然社長を亡くされた会社の従業員の方々が、取引先だった由紀精密に事業を託したいと言ってくださったり。

パターンは色々で、「こういうケースでM&Aをしてどんどん増やしています」っていうのはありません。自ら動いて案件を探すというのも、まだあまりないです。
今は新しいグループ企業を増やすことよりも、今ある企業をより良くしていく方に集中しているところです。

(真)
由紀HDが全国の中小企業の救世主として存在し、メディアなどで発信されていく中で、 「グループに入りたい」と手を上げる企業がこれからさらに増えていきそうですね。

 

(大坪)
そうなっていくと嬉しいですね。自分の事業をもっと加速させたいとか、海外にも売り込みたいと考えている会社のオーナーに共感してもらい、グループに入ることでブーストアップして、会社の力をもっと伸ばしてもらえたらいいなって。

そのためには、まずうちがもっと実績を出さないといけないなと思って、日々仕事に取り組んでいます。

 

 

中三で出会ったジャズバンドでの経験が、その後の自信に繋がった。

(真)
ビジネスから話は離れますが、大坪さんと言えばすごく多趣味でいらっしゃいますよね。

 

(大坪)
多趣味って言っても、広く浅いんですよ。
でも、一番得意だと言えるのはスキーかな。中高と硬式テニス部だったんですけど、試合も全然勝てず、成績もたいしたことなくて。テニスは向いてないなと思い、大学ではテニスサークルが流行っていたんですが私はあえてスキーを始めたんです。
スキーはちゃんとやろうと思って4年間頑張って、結果全国大会にも出場できました。

あとはピアノは3歳からずっとやっていて、中学ではギターにはまって。中三の時に、すごく活発なジャズバンドに入ったんですよ。いろんな学校から集まった学生同士のバンドで、毎週のようにコンサートをやって、いろんなところに営業して貯めた資金でアメリカに遠征旅行に行ったりしました。

(真)
アメリカに遠征ですか。学生バンドでありながらかなり本格的ですね!

 

(大坪)
半分プロみたいなバンドでした。実際そこからプロになったメンバーも何人かいます。

でも、自分は別にめちゃくちゃギターうまいかって言われたらプロにはなれないし、ピアノも普通に娘に負けているくらいで。(笑)

スキーは結構頑張ったんですが、それでも全国で基礎スキーの種目別76位が最高かな。色々やりましたが、全国でトップの方に行けるようなことは何もできなかったですね。

 

(真)
でも大半の人って、何かで全国1位になろうとすら思ってないじゃないですか。楽しい程度でとどめたり、極める前にやめちゃう人が多いですよね。

大坪さんの場合、何かを始める時点で、せっかくやるならトップを目指したいという気持ちがいつもあったんですか?

 

(大坪)
そんなこともなかったです。むしろ、あまり目立つのが好きじゃないタイプの小学生でした。

でもそういう意味では、やっぱりバンドの影響が大きかったのかもしれないですね。
全国の吹奏楽コンクールで、ゲストとして最後に登場してジャズの演奏でみんなをびっくりさせたり、参加希望者からオーディションをしてメンバーを厳選していったりとか。最後はアメリカのいろんなところで演奏して、すごく盛り上がって。

音楽って麻薬みたいなもので、毎週のようにステージに立っていると何か舞い上がっちゃうんですよ。「何かすごいことできるんじゃないか」っていう、変な自信がみなぎるんですよね。

それで、そこの勢いが冷めやらぬうちに高三で受験に突入して、そこから半年間勉強して東大に受かったことがまた変な自信に繋がって。

 

一度やると決めたら、手を抜かずに徹底的に。

(真)
半年で東大現役合格ですか!すごい。

 

(大坪)
本当にまぐれで、神風が吹いてしまったんです。私は中高6年間、塾には通っていなかったんですね。しかも勉強しないでバンドとかばかりやっていたから、高三で塾に入ってもずっと塾行ってる人に勝てるわけがないと思って。

それで、勉強する理論とか受験のための作戦とかを必死で考えて、ひたすら自分で勉強していったんですよ。それがすごく楽しくて。

模擬試験では D判定しかとれなかったんですが、最終的に神風が吹いて受かることができました。

 

(真)
目標を達成するために徹底的に戦略を立てて努力されたという部分は、今のホールディングス経営にも繋がっている気がしますよね。

 

(大坪)
そうですね。最初から無理だと思わないで、チャレンジするっていうところは繋がっているかもしれないです。やるって決めた時には、それがちゃんと上手く行くようにとにかく努力していく。手を抜かないで、徹底的にやるんですね。

でも一方で、頑張ればできると思う反面、自分に足りないところもすごく分かっていて。大学に入ってから、ギリギリで入った自分と本当にすごい人の差があまりにも明らかで、「自分のレベルはこんなもんだな」っていうのを実感したんですね。

それって仕事でも同じで、とんでもなくすごい経営者は周りにいっぱいいるわけです。自分は数十人の会社の売上を17年で何倍かに増やして取り上げてもらっているけど、他にもっとすごい人はいっぱいいるし、自分なんてたいしたことないなって。

 

(真)
頑張ればできるっていう絶対的な自信の部分と、自分なんてまだまだだっていう部分が共存しているんですね。大坪さんのような方でもそんな葛藤があるんだと聞いて、少しホッとしました。(笑)

 

 

MITSUBOSHI1887のジャケットは肩が凝りにくく、
カジュアルになりすぎないところもいい。

(真)
大坪さんにはMITSUBOSHI 1887のジャケットをご愛用いただいていますが、普段からジャケットを着られることは多いですか?

 

(大坪)
そうですね。最近はビジネスシーンでの服装もだいぶカジュアルになってきていますが、私はどんなにカジュアルになっても、なんとなく襟付きのシャツとジャケットは着たい派なんですよ。製造業っていうのもありますし。

なのでジャケットはいくつか持っているんですが、ずっと着ていると結構肩が凝るものが多くて。だから、楽に着れるジャケットが欲しいなと思っていたんです。

その時にMITSUBOSHI 1887のジャケットを知って、これは良さそうだなと思ってすぐ買ってしまいました。

 

(真)
ありがとうございます!最近だと、どういうシーンでで着ていただいていますか?

 

(大坪)
最近は基本的に在宅勤務なのですが、どうしても対面でやらないといけない仕事やミーティングがある時など、週に何回かは東京や茅ヶ崎まで出ていて、そういう時によく着ていますね。

あとは、お客さんとのテレビ会議など、服装をちゃんとしておきたい時にも着ています。

(真)
お家でも、外出時にも着ていただいているんですね。特に気に入っているところはありますか?

 

(大坪)
まず、体への負担が少ないところですね。程良くストレッチ感があって、肩が凝りにくい。

あと、あまりカジュアルすぎるようにも見えないところもいいなと思っています。シワもつきにくいですし。
とても気に入っていて、色違いも欲しいなあって思っているところです。

 

(真)
ありがとうございます!ぜひこれからも、オンオフを問わず様々なシーンで着ていただけたら嬉しいです。

 

 

いいものを長く使う文化が、もっと浸透していくといい。

(真)
コロナが飲食業や観光業に影響を与えているのはもちろんですが、中長期的に見るとファッションにも大きく影響を与えるんじゃないかと感じます。そういう意味では、仕事中やプライベートでの服装の変化など、大坪さんご自身のファッションや一般的なファッションについて、何か感じていることはありますか?

 

(大坪)
もともと私はどちらかと言うと、「いいものを長く使いたい」と思うタイプなんですね。ジーンズや靴なんかも、大学生の時に買ったものを今でも履いたりしていて。

そういう意味では、このタイミングからもっとそういう文化になっていけばいいんじゃないかなって思うんです。
このコロナで、時間への感覚や考え方が変わってきている気がするんですよね。

今までは通勤に仕事、飲み会と朝から晩まで忙しく過ごして、何かをゆっくり考える暇もなかった。でも、コロナで幸か不幸か少しゆとりの時間が増えて、Webで買い物してみたり何か調べ物をしてみたり、そういうことができるようになって。
その中で、「もっと時間を豊かに使いたい」と感じるようになったなと思うんです。

この先服を買う機会が減っちゃうかもしれないけど、だからこそよく考えて良いものを選ぼうとか、そういう文化がもっと浸透すると良いんじゃないかなって思います。

 

(真)
確かに、どうせ買うなら長く使える良いものをとか、作り手の顔が見えるものを、という傾向はより強くなっている気がしますよね。

MITSUBOSHI1887もお客様との対話を大切にしながら、長く使い続けられる商品を今後も届けていきたいと思っています。

本日は、今まで知らなかった大坪さんの原点なども知ることができ、ますますファンになりました !貴重なお話をありがとうございました。

大坪さんご愛用中のスーパーメリノ・カーディガンジャケットはこちら

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