羊にまつわる名作に触れる
今年も夏がやって来ましたが、去年までとは全く異なる夏ですね。お盆連休にも関わらず、故郷への帰省や家族でのご旅行を断念せざるを得なかった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
代官山スタッフも5日間のお盆休みを頂戴しておりましたが、やはり自粛の夏。「せっかくの休み、どうしても旅行したい・・!」という気持ちは拭いきれませんでした。
そこで、MITSUBOSHI 1887では【夏休みの研究旅行】と題し、「私たちが今まで知らなかった羊の世界を研究しに行こう!」と計画。
(オンライン上で)羊のプロにお話しを伺ったり、作品に触れたりしながら羊の世界を旅行してまいります。
「研究旅行」なので、夏休みの課題も捗ってしまうかもしれません。気ままにふらっと出かけるように、リラックスした気持ちで同行していただけたら嬉しいです。
今回は、「あいにくの天気でお出かけできない・・。」そんなときにも、楽しみながら知識を深められる、羊にまつわる映画や本の世界へ向かいます。
代官山スタッフの2名と代表の岩田が、感想も交えつつそれぞれの作品の魅力を伝えてまいりますよ。
以上の3作品の中のうちの2つは先日ミツボイスにてご協力いただいた羊SUNRISE代表 関澤さんのオススメなんです!
羊愛溢れる方のご紹介とあれば早くも『絶対面白ろそう!』という香りがプンプン漂ってきますが、ぜひ私たちの感想も参考の上、お好みの作品を見つけてみてくださいね。
1. 「羊をめぐる冒険」(小説)★関澤さんオススメ
本当の弱さと喪失から生み出されるもの
佐藤 汐里
「自分の弱さは愛しく、そして、これからどう付き合っていこうか。」この作品を読み終えたとき、私はこんなふうに考えました。
「羊をめぐる冒険」の単行本の帯には「すべてを失った僕のラスト・アドベンチャー」と書いてあります。この物語は、主人公である「僕」の過去のガールフレンドの死からスタートし、友人である「鼠」から送られた写真に映っている「星斑を背負う羊」をめぐり、物語が展開していきます。
話が進むにつれ、舞台は東京から北海道、そしてさらに人里離れた山奥へと変わり、日常の喧騒から非日常的な静けさへと向かいます。まさに全てを失い、そこからまた失い孤独へと向かう「僕」とリンクしています。
この物語を通し、私は「本当の弱さ」について考えました。これは作中で「鼠」が放った言葉の一部です。人間誰しもが抱えているであろう「弱さ」に、「本当の」が付くだけで暗闇に囚われたような気持ちになります。しかし、自分のそういうところが好きなんだと「鼠」は言いました。
自分の弱さについてどう考えるでしょうか。自分は強いと言える人間はどれほど居るでしょうか。そしてその弱さから、何を生み出すのかは人それぞれです。同じ材料だったとしても、答えは異なります。
ここでは敢えて「星斑を背負った羊」には触れませんが、私はこれを単なる物語のピースではなく象徴だと捉えています。弱さと喪失、そしてそこに巣食うものをひりひりと静かに感じられる物語になっていると思います。
2. 氷河の羊飼い(映画)
“なぜ怖い?”と問えばもう怖くない 孤独と向き合う羊飼いの生き方
山田 桜子
羊飼いの女性ツェリンが暮らすのは、標高3500mのヒマラヤ山脈麓にあるインド・ラダック地方。羊たちを飼いならすツェリンをみて憧れを抱いたのは、羊だけでなく「孤独を飼いならす」強さです。農村には家族と仲間たちがいますが、羊や山羊の餌となる植物が豊富な土地を求めて山を移動し、ときには3ヶ月間一人で過ごします。夜にはラジオを聴くのですが「ラジオが壊れて聴こえこえなくなると誰かを亡くしたように空っぽな気持ちになる」とつぶやきます。そんな彼女はこう語るのです。
「一人でいると時々怖くなる。でも羊たちを見ると安心する…(省略)…それでも怖ければ祈りをささげて“なぜ怖い?”と問えばもう怖くない。 」
なぜ怖い?と問い、自分自身と向き合うことによって彼女は強く生きていきます。
そしてなにより彼女を支えるのは羊や山羊たち。生まれた子羊とその母羊に優しく語りかける場面からは生き物への愛と思いやりが伝わってきます。
バター、羊毛、カシミア、肥やしは燃料や畑の肥料として「家畜は私たちにあらゆるものをくれる」というツェリン。私たちが手に取る羊毛やカシミアに、ツェリンの育てたものがあるかもしれません。ラダック地方の羊飼いの背景を知れると同時に、強く清々しいツェリンの生き方に深く考えされられるドキュメンタリー作品です。
3. ひつじ村の兄弟(映画)★関澤さんオススメ
自分にとっての「羊」を考えさせられる大人の映画
岩田 真吾
ひつじ村の兄弟(氷Hrútar)は、羊をテーマとしながらも、伝統や家族、地縁と言った「縛るもの」の非合理性と、論理を超えた愛情についての物語です。見る人の経験値によって見え方が変わる大人の映画だと思います。
アイスランド辺境の羊飼いたちの村に凶悪な羊の伝染病がはびこるところから、事件は動き出します。伝染病の拡大を抑えるには、何世代も育て慈しんできた羊を全頭殺処分するしかありません。それはすなわち、血統が途絶え、もう二度と元には戻らないということ。そして、羊飼いという事業が経済的に成立しなくなり、羊飼いという生き方が失われるということ。そこで主人公は、驚くような、でも、とても静かな抵抗を試みます。
羊飼いではない私たちからすると「彼はなぜそこまで羊に執着するのか?」と疑問に思うかもしれません。しかし、羊に象徴される「縛るもの」は誰しもにあると思います。失いたくない貴方の「羊」とはなんでしょうか?
以上となりますが、いかがでしたでしょうか?気になる作品はございましたか?
「まだまだこんなのもおススメ!」という作品がありましたら、ぜひお気軽にメールや各SNSなどから 件名「おすすめの羊作品」でお教えくださいませ。
時間を持て余しがちなお家での過ごし方の一つとして、映画や本などで羊との仲を深めてみるのはいかがでしょうか?
ミツバル「羊とファッション」【8 / 21(金)オンライン開催】
羊について語り合いませんか?
月に一度開催しているミツバル。今月は8月21日(金)19時からオンラインにて開催いたします。
今回のテーマは「羊とファッション」です。
【夏休みの研究旅行】と題した一連の記事を読んで、ミツバル(オンライン開催)に参加してみませんか?
現在、MITSUBOSHI 1887のオンラインストアでは、ご覧いただいているページと下記の2つを含め、3つの記事を公開中です!
MITSUBOSHI 1887にて公開中の記事のご感想、またはご自身が興味のある羊関連のことについて、一緒にお話しできればと考えております。
「まだラム肉食べたことないけど食べてみたい・・」「冬になると必ず着てしまうウールのセーターがある!」など、どんな些細なことでも構いませんので、ぜひお気軽にご参加ください。
-
【夏休みの研究旅行】羊のプロ「ラムバサダー」を訪ねて(1日目)
-
【夏休みの研究旅行】ウールマスター「ひつじくん」に会いに行く(2日目)