オーダースーツは「買うもの」ではなく「共に作るもの」
株式会社CANAL代表取締役 / TAILOR LINE 代表
澁川慶成
1. オーダースーツは「買うもの」ではなく「共に作るもの」
いざ「オーダースーツを作りたい」と思い立ったとき、どれくらいの時間がかかるのか不安を感じられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
『注文当日には、どのくらいの時間を空けておくべき?』
『この予定の時までにほしいけど間に合うかな?』
などのお声をよく耳にします。
今回は、実際にMITSUBOSHI 1887 でのオーダーの流れをご紹介していきます。
A. 事前アンケート
まずは、事前にご所望のサイズ感や生地についてオンラインアンケートへのご協力をお願いしております。アンケートのご回答をもとに、できる限りお客様のご希望に沿った生地を予めご用意し、スムーズにご案内できるよう準備してお待ちしております。
B-① ヒアリング
ご来店いただきましたら、まずはヒアリングを行っていきます。どのような場面でスーツを着るのか?どのようなセルフイメージを自分に持ちたいか?/相手に持たせたいか?を丁寧に伺います。
B-② 素材
ヒアリング結果に基づいて素材を選びます。バンチブックと呼ばれる小さなサンプルで生地選びをするテーラーが多い中、MITSUBOSHI 1887 代官山ショールームではハンガーサンプルという巾約30センチ × タテ約50センチの大きなサンプルを使い、手触りやハリ感をしっかりと感じて頂きながらお選びいただけます。
B-③ デザイン & ディティール
生地に合わせて、シングル/ダブルや三つボタン/二つボタンなどの全体デザインと、ポケットの位置やボタンの個数などのディティールを決めていきます。「どんなデザインが良いのかわからない」というお客様でも、ヒアリングに基づいて間違いないご提案をさせて頂きます。
B-④採寸 & 補正
オーダーメイドスーツと言えば、こちらの「採寸」のイメージが強いと思いますが…実はけっこう後半なんです。身体の幹となる総丈、バスト、中胴、ヒップ、ウエストの順に計測し、太腿、膝上、ふくらはぎからパンツを、肩幅や袖丈からジャケットに補正を加えていきます。
オーダー当日に掛かる時間は、MITSUBOSHI 1887 でイージーオーダーを作る場合初めての方ですと約1時間半、2回目以降の方は1時間ほどとなります。
C. 製造
オーダー頂いた詳細情報と生地を縫製工場へ送り、裁断・縫製・仕上げという3つの工程を経て、スーツがカタチになります。工場の後、フルオーダーも行うテーラーラインお抱えの職人技術を生かして、検品とプレスを1着につき1~1時間半かけて行います。検品では糸くずがついていないかなどをくまなく見ていきます。プレスでは主に、肩や襟まわりを中心に重要な箇所を丁寧にアイロンワークで仕上げていきます。
MITSUBOSHI 1887 では、イージーオーダーですと1か月半~2か月ほどお時間を頂戴しております。
また、フルオーダーの場合ですと、「仮縫い」の段階で一度ご試着いただき再度調整したうえで、「本縫い」の工程へと移ります。オーダー方法の違いによっても、オーダーに掛かる時間や納期までの時間は変わってきますので、それぞれの違いについてはまた事項でご説明したいと思います。
D. ご納品
お受け取りは、店頭またはご配送をお選びいただくことが可能です。店頭の場合のメリットは、テーラーも同席して受け取ることができるので、不安な点やメンテナンスなどをすぐに聞いていただけます。
また、MITSUBOSHI 1887 では、ご配送を希望される方にもご納品後のカウンセリングシートをご用意しております。チェックポイントなどがわかりやすくまとまっておりますので、相談にお役立ていただけると幸いです。
半年以内であればお直しは無料で承りますので、気になる箇所などございましたらお気軽にご相談いただけます。
2.Tailor LINEのイージーオーダーはここまでデキる
前項でも少し話題に触れましたが、オーダースーツには大きく3つのオーダー方法があります。お店ごとに名称が異なる場合もありますが、パターンオーダー、イージーオーダー、フルオーダーの3種類です。
・パターンオーダー
用意された型紙の中から自分の体型に合うものを選び、着丈などの細かい部分を調整して仕上げるオーダー方法。既製品と同じように、標準体型に合わせて作った型紙を使用しています。比較的安価で仕上がりも早い方法です。
・フルオーダー
オリジナルの型紙を起こすところからはじまる、まさに究極の一着が作れる方法です。完全オリジナルのスーツになるため、手間やコスト、完成までの時間がかかります。最も高価なオーダー方法になっています。
・イージーオーダー
あらかじめ何種類かの型が決まっており、体型に合わせて型紙を修正していく方法です。ゲージ服というサイズサンプルを試着し、細かな部分の体型補正も行うことができます。幅広い価格設定が存在しますが、比較的手ごろな価格で自分の体型にフィットしたスーツを仕立てることができます。パターンオーダーとフルオーダーの中間的な位置づけとなります。
ひとえにイージーオーダーと言っても、お店ごとに仕様はさまざま。今回は、MITSUBOSHI 1887 で提携しているTailor LINE様のイージーオーダーをご紹介いたします。「え?そんなに細かいところまで?」というくらい、デザインの選択肢が豊富なのです。
・上着
シングルブレストまたはダブルブレストをお選びいただけます。ビジネス用に仕立てられる方にはシングルブレストが人気です。特に、1つボタンや2つボタンがお仕事用にはおすすめですが、オーダーですので4~5つ付けることも可能です。
・ベスト
スリーピースをご所望のお客さまには欠かせません。こちらもシングルブレストまたはダブルブレストをお選びいただけます。ボタンの数やバックスタイル、襟付きまで選択が可能です。
・ラペル
ノッチドラペル・セミノッチドラペル・ピークドラペル・セミピークドラペルをお選びいただけます。通常は、シングルスーツにおける定番スタイルのノッチドラペルの場合が多いです。
・ステッチ
なし・2ミリ・5ミリ・7ミリ・10ミリ・ダブル(2本)の中からお選びいただきます。日本の湿気では生地が浮きやすいため、基本的には2ミリをおすすめしております。数や本数が増えるほど、カジュアルな印象になります。
・裏地
天然キュプラ素材を使用した生地を、無地から柄ものまで幅広く取り揃えております。追加料金がかかるとしているお店も多いですが、Tailor LINEでは「お客様に選ぶ楽しみを」という気持ちで、どんな裏地でも値段は変わりません。
・内ポケット
内ポケットは、胸ポケット・下内ポケット・チェンジポケットをはじめ、いくつかのポケットが存在します。その中でも、タバコポケットや切符ポケットなど、使用頻度の少ない細かなポケットがあります。人によっては、パスカードやカギをしまうために使う方もいらっしゃいます。各ポケットの必要有無や仕様は、オーダー時にしっかりとテーラーにご相談いただけます。
・外ポケット
胸ポケットは、箱ポケット・バルカポケット・パッチの中からお選びいただけます。
横ポケットは、フラップポケット(水平 または 斜め)・パッチポケット・チェンジポケット(水平 または 斜め)からお選びいただけます。
・腕ボタン
平置きまたは重ねボタンをお選びいただけます。
重ねボタンは別名キスボタンとも呼ばれ、ボタンの端を5ミリ程度重ねたオーダースーツならではのひと手間が感じられるシルエットです。
・パンツタック
ノータック・ワンタック・ツータックをお選びいただけます。すっきりして見えるノータックを選ばれる方が多いですが、近年はワンタックも人気です。
・パンツ裾
シングル・ダブル・モーニングの中からお選びいただけます。こちらもすっきりとしたシングル仕立てを選ばれる方が多いですが、ダブルも根強い支持があります。
・パンツディテール
持ち出しや、ベルトが落ちないようにピンループを付けるなど、テーラーとの相談の中から選ぶことができます。中には、ベルトループなしでサイド尾錠を付けたデザインをオーダーされる方もいらっしゃいます。経験豊富なテーラーとの会話の中から、自分に合ったスタイルを選べるのは、オーダースーツの醍醐味ではないでしょうか。
・ボタン
使っていくほど味の出る素材である、水牛の角・貝・ナットを採用したボタン中からお選びいただけます。こだわりのスーツ生地に合わせ、デザイン選びをお楽しみください。
・刺繍
Tailor LINEのオリジナル要素として、ジャケット裏の胸のところに自分の好きな刺繍を入れることができます。例えば、スーツの作った年と季節を刺繍される方や自分の目標の言葉を入れる方もいらっしゃいます。前もって言葉を考えておくのもまた、楽しい体験になるかもしれません。
(澁川)「以前、意識を強くするために目標の数字を入れられた方もいらっしゃいました。胸ポケットのところはよく見るところなので、潜在意識に刷り込まれやすくもあります。実際にその方は目標を達成されて、また新たな数字を刻んだスーツを新調されました。また、お子さまのお名前を入れる方もいらっしゃいます。ご家族の存在を常に感じることができるので、モチベーションが上がり、お客様自身のセルフイメージを輝かせることにも繋がるのではないでしょうか。」
スーツのサイズは、総丈(身長)とウエストから導くことができ、そこに体型の分類を加えることで、より身体にフィットしたスーツを選べるようになっています。体型の分類は「〇体」と表され、5種類に分けることができます。
しかし、そこまで考えてもなお、自分の体型に合ったスーツの見つけるのは至難の技。なぜなら身体のバランスは左右で微妙に違っていたり、肩とウエストでも既定の体型とは異なっていたりするからです。そういったとき、オーダースーツなら細かい部分まで補正できるので、きちんと自分の体型に合った一着を作ることができます。特にTailor LINEでは、35箇所の補正をミリ単位で行うことができるのです。
(澁川)「補正を行う際には、ジャケットであれば肩下がりや姿勢、お腹周りなどを見ていきます。反身や屈伸など、その方の姿勢に合わせて補正箇所を確認していきます。パンツでは脚の長さや形はもちろんのこと、太ももの筋肉の付き具合や太さの影響が大きいので左右それぞれ確認しています。体型に合っているということは、セルフイメージを上げる一着には欠かせない要素と言えるでしょう。」
3.スーツ作りは「相談」から ~オーダーのことをbespokeという由来~
現代において、スーツは普段着から勝負服という印象という印象が強くなってきています。だからこそ、納得のいく一着に身を包むことで、ここぞというときに力を発揮できるのではないでしょうか。
オーダーのことを“bespoke”とも言います。その由来は、(諸説ありますが)テーラーが顧客と話をしながら注文を受けた様子からきています。
ご相談にいらっしゃったお客様は、現在のお仕事の話やご家族の話をされる方がたくさんいらっしゃいます。例えば、お子さまの好きなものの柄を裏地に選ばれたり、大切な場面を控えたお客様のご相談を受けたり。人生の節目において、新調されるお客様もいらっしゃいます。その度に、オーダースーツはお客様の人生と密接な関わりがあるのだと実感します。
(澁川)「シンデレラがドレスを持っていなければ舞踏会に行くことができなかったように、ステージが上がれば必要になるスーツも変わってきます。驚くことに、新しいスーツがそれに相応しいステージにお客様自身を引き上げることもあるのです。生地や裏地、デザイン、さらに刺繍などセルフイメージの上がる一着が、貴方だけの豊かな未来を築いていくと信じてお仕立てしております。」
成功に向けた先行投資として、まずは一度ご相談くださいませ。